一家に一冊

最近、暇な時にちょびちょび『戦後世界経済史』(猪木武徳著、中公新書、2009)という分厚い新書を読んでいるんですが非常に面白いです。


とはいっても内容というより書き方のほうにどうしても目が向いてしまいますね。このテーマで書けるのがすごいですね。「戦後世界経済史の特徴を五つのキーワードを使って論じよ」といわれているようなもので、このお題に要領よく答えられる人がどれくらいいるんでしょう。

最初に「市場の浸透と公共部門の拡大」「グローバリゼーションと米国」「所得分配の不平等」「グローバリゼーション」「市場の設計と信頼」というキーワードを提示していてこれらを軸に事象を整理しようとしています。この手の本はこうやって書けばいいのか(笑)

暇な時に適当なページを開いて読んでいるのでどれくらい進んでいるのかよくわかってませんが、今日読んで印象的だったのはアメリカの鉄鋼業の衰退の話。アメリカの鉄鋼業は大戦後技術革新に乗り遅れて、ヨーロッパや日本の後塵を拝することになり、「1980年には60万近い労働者を雇用していたが、90年には半数以下の28万人にまで減少するという苦しい雇用調整を強いられた」(105頁)。解雇された労働者の多くが高齢、50代以上。

その後、いわゆるラストベルトの形成や、出版のタイミング的にこの本には書かかれてないがその後のトランプの台頭を準備することになる。ブルース・スプリングスティーンが歌った荒涼とした地域社会が出来上がる。

こういう感じで当時の音楽とか映画と関連付けるとやっぱり俄然楽しくなってきますね。ということで私が一番関心があるのはやはり65-85年くらいのイギリスということになりますね。この時代のイギリスのポピュラー・ミュージックの爛熟ぶりを用意したものはなんだったのか。

最高到達点