弔辞

安倍政権下で起きたことを忘れないようにすることが必要だが、覚えていたくない。しかしまとめてくれているツイートを発見した。

安保法案とか特定秘密保護法もあった。あと自民党総裁の内規を変えて3選した。相模原の大量殺戮に強い抗議のコメントを出さなかった。学術会議の任命問題…は菅政権か。

個人的には戦後最悪だったかどうかの判断は保留しておきたい。良し悪しの基準によっては、その座はお祖父ちゃんに譲ってもいいかもしれない。

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ただ、彼が菅や岸田と比べてもこれほどまでに批判され続けているのは、日本社会の価値観のバックラッシュをもっともよく体現した政治家だからだろう。官房長官時代のジェンダーバッシングから(あるいはもっと前から)安倍「美しい国」晋三はまさしく反動路線をひた走った。

そして彼を総裁に戴く自民党の政権へのカムバック自体が、再分配の強化やジェンダー平等の実現やナショナリズムの脱構築といった価値観を現状の政治では実現できないということを明らかにしてしまった。これは、リベラルを自認する人々にとっては無力感を増大させる出来事にほかならなかった。

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いまの20代はティーンエイジをバックラッシュのなかで過ごさざるを得なかった。人口が減りGDPは停滞しそして(自らが票を投じたわけではない)反動保守政権がやってきた。本当に悲惨だ。

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これは余談だが、かつて国会議事堂の裏手にある学校に通っていた。国会議事堂は体育館の4階の剣道場からもっともよく見えた。よりによって剣道というのが最悪だ。剣道は、まさしく第一次安倍政権で改訂された教育基本法によって必修化された。

私は貴重な時間をむやみに重い防具と奇天烈な掛け声と意味不明なポージングによって構成される時代遅れの、竹槍訓練を思い起こさせる競技の練習に費やす羽目になったわけだが、それは窓の向こうの国会で居眠りしている反動老人たちのせいなのだと思うと憤死しそうになった。

私は半ばやけくそで、国会議事堂を真っ二つに切り裂くべく、滑稽な及び腰で窓に向かって剣を振りかざしていた。