一週間前からブライアン・イーノのディスコグラフィを聴き直してコンディションを整え、先週金曜日、満を持して京都駅前のイーノのインスタレーション展示に乗り込みました。
私がイーノのインタビューなどを日頃から好き好んで読んでいるためか、期待を大きく裏切られる作品みたいなのはなかったですが、彼の思想がビビッドに感じ取れるよい展示でした。
私見では今回の複数の作品には、ものごとの連続性、動態性、一回性、偶然性、みたいなものを重視する姿勢が通底していました。これは分断の時代に対するイーノなりの態度表明とみてよいのではないでしょうか。
そのなかでも特に連続性というか、グラデーショナルでスパッとカテゴリには切り分けられないもの、みたいなモチーフがとてもフィーチャーされてます。複雑なものを動態の相において、複雑なままとらえよ、というメッセージが、お題目としてではなく、オーディエンスの体験を通じて伝えられるわけです。これはインスタレーションにしかできないことでしょうね。
あるいは横山大観の生々流転が動画化・インスタレーション化したらこんな感じになるのかもしれません。
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イーノは70年代にオブリーク・ストラテジーズ(OS)というものを考案しました。これは要は創作tips集で、彼は100個のtipsを作り出し、カードにしました。行き詰まったときに適当に引くとインスピレーションが得られるかも…みたいな効用が期待されているわけです。
今回、物販で箱入りのOSが売られていて、イーノ・ファンとしてはそれが一番興奮したかもしれません。アッ、生のOSだ!9000円だ!ボりすぎやろ!みたいな。しかし一瞬レジに持っていく誘惑に駆られてしまったのも事実です。
そこでせっかくなので自作することにしました。OSの一覧じたいはネットでももちろん見れますし、なんならカード印刷用pdfファイルをつくってくれている人もいます。
私は会場を出るとその足で京都ヨドバシに向かい、厚めのインクジェット紙を買って家に帰りました。そしてpdfを印刷してせっせとカードを裁断しました。その結果がこちらになります。
適当に引いたところ、
Not building a wall but making a brick
Retrace your steps
と書いてあるカードが出ました。大それた妄想に気を取られずに一歩一歩の進捗に着目せよ、今までやってきたことを振り返り自信を得て、今やっていることの意義を深く理解せよ、という感じでしょうか。
同じようなことはよく考えますしこのブログにもなんかそんなような内容を書いた気がします。しかしあと98個あると考えるとよくリストアップしたな、という感じですね。
結局このブログのカテゴリのひとつである「セルフ研究講座」というのも、ものをつくる上で、自分なりのOSみたいなものを蓄積させていきたいという狙いで作ったものです。しかし、イーノのOSが大部分カバーしてくれてる感があります。
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熊さん「そろそろこの記事も締めたいと思います。最後に一言お願いします」
ご隠居「イーノ、良いのお!」